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運動失調と協調運動障害

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運動失調と協調運動障害について

運動失調とは、「運動麻痺がないにもかかわらず、筋が協調的に働かないために円滑に姿勢保持や運動・動作が遂行できない状態」をいいます。協調運動障害とは「運動を介して目的を達成するために必要な身体を構成する諸要素(関節や筋など)の調節能力障害」とされています。

 

どちらも、協調や調節といった言葉が使われており、使い分けが難しいように思えます。脳卒中理学療法の理論と技術改訂第2版には「運動失調は大きく協調運動障害と平衡障害に分けられる」とあります。これを見る限りでは、運動失調は広義の意味で使われており、協調運動障害は狭義の意味でつかわれていると思われます。

具体的には、失調は「物事の調子が狂うこと」や「つり合いが取れなくなること」という意味であるため、例えば栄養のバランスがそこなわれ不健康状態を栄養失調、自律神経系の調節がうまくいっていない場合は自律神経失調となります。そのため、運動のつり合い(円滑な動作など)が取れていない場合は運動失調となるのです。要は失調は状態を言い表していることとなります。それが運動で起こっているのか、栄養なのか、自律神経で起こっているかの違いです。

では、協調運動障害はどう使うか。「この患者様は歩行のときに失調があります」と臨床で度々聞かれると思います。果たしてどのような失調か思い浮かべることができましたか?筋の調節がうまくいかず、円滑な重心移動ができないのか、出力やタイミングの問題なのか、左右への動揺が強いのかわからないですよね。上記でも述べた通り、運動失調には協調運動障害と平衡に分けられるとあります。具体的には、「随意運動がうまくいかず、運動の方向と程度か変わってしまう」「姿勢の異常が出現し、正常に姿勢を保持するのに必要な随意的あるいは反射的な筋の収縮がそこなわれている」といった運動の正確さや主動作筋と拮抗筋の協調の障害、主動作筋から拮抗筋へのスムーズ運動の変換の障害をいいます。

このことから、協調運動障害は、運動失調の症状の中でも、運動の方向や程度、主動作筋と拮抗筋の調節の問題時に使われる。似た言葉でも、しっかりとその意味合いは異なり、使い分けが可能です。また、言葉の意味や定義をしっかりと理解しておくことで、日々の臨床でのアプローチが変わっていき、より患者様の状態を把握することができます。徒手的な技術がすべてではありません。また、状態をしっかりと把握できてなければ徒手的なアプローチの効果は半減されてしまいます。日々少しずつスキルアップしていきましょう。

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